【5分で分かる】早期退職と希望退職の違い|応じないとどうなる?

日本の終身雇用制度は崩壊しつつあります。入社すれば定年まで安泰と言われていた大手企業でさえ、いつ倒産の危機になってもおかしくない時代です。最近では希望退職や早期退職という言葉もよく聞きます。

似ている用語ですが、希望退職と早期退職に違いはあるのでしょうか。また応じない場合どうなるのか疑問に思う人もいると思います。今回は早期退職と希望退職について詳しく解説します。対象になった時に困ることのないよう、準備するべきことについても解説するので、ぜひ参考にしてください。

早期退職と希望退職の違いとは?

早期退職も希望退職も「定年より前に企業を退職する」ことです。どちらも従業員の意思によって選択できるものですが、実施される時期や目的が異なります。ここでは早期退職制度と希望退職制度の違いについて解説します。

早期退職制度

早期退職制度とは、企業が退職に有利な条件を出して退職者を募集する制度です。募集する理由は次の章で詳しく解説しますが、業績悪化の他にも、人員の再構成や従業員の選択肢を広げる目的で実施されることがあります。そのため早期退職は福利厚生の一つとして、期間を定めず常時利用できる制度です。制度を利用して退職した場合は、会社都合の退職として扱われます。

希望退職制度

これに対し希望退職制度は、企業の将来的なリスクに備えて人数や期間を限定して行なわれる制度です。人員整理を目的として募集されることがほとんどで、早期退職と同様に優遇措置を設けるパターンが多くあります。

強制力はなく従業員が応じるかどうかを選択できますが、退職勧奨を伴うことも多いようです。退職勧奨とは、リストラの対象となった時に企業から退職を勧められる、いわゆる肩たたきのことです。

ただし企業にとって残ってほしい人材が希望退職に応募した場合は、引き止めに合うこともあります。基本的に希望退職に応じた場合も会社都合として扱われますが、引き止め後に強引に退職した場合は自己都合となるので注意が必要です。

募集しても退職希望者が集まらない場合

もし募集しても集まらない場合はどうなるのでしょうか。募集した理由にもよりますが、次のパターンが考えられます。

  • 対象者の幅を広げて再募集する
  • 優遇措置を厚くする
  • 対象者を異動または出向させる

「対象者の幅を広げて再募集する」と「優遇措置を厚くする」は穏便な方法ですが、「対象者を異動または出向させる」は少し手荒な方法かもしれません。例えば対象者をやりがいのない部署に異動させたり、厳しい条件の業務に従事させたりすることもあります。いわゆる窓際です。無理に退職を強要することは違法とされていますが、企業側も存続するためにこのような遠回しの方法で人員整理しようとすることもあります。

早期退職と希望退職を企業が募集する理由は?

早期退職や希望退職を募集する理由は企業によって異なります。ここでは募集の背景となる主な理由を3つ解説します。

業績悪化のため

業績が悪化したからといって、すぐに企業が倒産するわけではありません。しかし現状を維持したまま企業を存続させることが難しい場合に実施されます。業績悪化を理由に募集する企業は増えており、2020年に早期・希望退職者募集をした上場企業は90社以上にのぼりました。この数字は2009年のリーマンショック以降の数値です。2021年も10月時点で70社を超えています。業績悪化だけが理由とは限りませんが、今後も募集企業は増えていくことが考えられるでしょう。

組織の若返りを図るため

企業の経営が黒字の場合でも、早期・希望退職者を募集するケースがあります。その一つが組織の若返りを図るためです。景気が良かった時代に増えてしまった中高年の役職者を整理することで、若い社員に所得を分配する、職場に新しい風が吹くなどの効果が期待できます。

組織再編のため

企業が合併や吸収などで組織再編の必要が出た時にも募集されることがあります。吸収や合併が行なわれると、部署が重複したり余剰人員が出てきてしまったりします。吸収合併を理由による解雇は認められていません。そこで希望者を募って組織再編を図ります。

早期退職と希望退職に応じたらどのような優遇措置がある?

早期退職や希望退職の場合、退職条件が優遇されることが多いです。ここではどのような優遇措置があるのか紹介します。

割増退職金

割増退職金とは、通常の退職金に上乗せされて支払われる退職金のことです。割増額は企業によって異なりますが、一般的な相場は年収の2倍とされています。例えば年収800万円の人が早期・希望退職に応じた場合、通常支払われる退職金に1,600万円上乗せされた退職金が支払われることになります。

ただし業績悪化が理由の場合は、これより少なくなる可能性も十分あるので留意しておきましょう。また大手企業のなかには4,000万円もの割増退職金を上乗せした例もあります。

再就職支援

早期・希望退職は50代以上が対象となるケースがほとんどです。転職は年齢が上がるほど厳しくなる傾向にあります。40代ですら厳しいと言われている時代です。50代以降の転職が、どれほど厳しいかは容易に想像できるでしょう。

そこで企業側が、再就職支援してくれるケースがあります。取引先に働きかけてくれたり、人材会社のサポートを受けたりできる場合もあるので、退職後に転職する必要がある人は積極的に利用するとよいでしょう。

有給休暇の買い上げや勤務免除

退職者のなかには、有給休暇が残っている人も多くいるでしょう。円満な退職のために労働者の権利である有給休暇を買い上げる企業もあります。金額は基本給を元に算出したり、一定の金額で買い上げたりするなど企業によって異なるようです。

また退職後は転職活動しなければならない人も多いので、少しでも早く就職活動が始められるように退職日までの勤務を免除する企業もあります。

もし早期退職や希望退職の対象になったら?

もし早期退職や希望退職の対象になったら、応じるべきか悩む人も多いと思います。ここでは対象になった時の選択肢について解説します。

強制ではないけれど状況が悪化することも多い

早期・希望退職は強制ではありません。対象になっても応じるかどうかは自分自身で決められます。転職活動の厳しさを考えると、残りたいと思う人もいるでしょう。

しかし残ったとしても辛い状況が待っている場合もあります。特に業績悪化を理由に募集する場合、会社は必要な人とそうでない人を分けています。対象となっているのに応じない場合、より厳しい部署への異動が待っているかもしれません。周囲からの見方が変わることもあるでしょう。募集人数に満たない場合は、いつ肩をたたかれるか分からない状況で働かなければならない可能性もあります。

出世も頭打ちと考えたほうがよいでしょう。残るのは悪いことではありませんが、これを機に次のステップについて考えることでより良い人生を送れる可能性もあります。

複数の選択肢を選べる準備をしておこう

早期退職は恒常的な制度ですが、希望退職はいつ募集されるかわかりません。自分がいつ対象となっても対応できるように、今から準備しておくことが大切です。

持っているスキルをさらに磨く努力をする、社外の情報にもアンテナを張っておくなどしておけば、いざという時でも慌てずに対応できるでしょう。スキルに関連する資格があれば、能力を視覚化できるので取得しておくのもおすすめです。

また副業可能な企業であれば、副業に挑戦してみるのも良いですね。それが将来本業になる可能性もあります。複数の選択肢を選べる準備をしておくことが大切です。

生涯現役で働きたいなら実務型顧問

退職後の選択肢について悩む人は多いと思います。特に50代を過ぎていると、企業に転職しても定年までの短い期間しか働けません。その後も働きたいとなれば、再び転職活動が必要になります。60代となれば、状況はさらに厳しくなるでしょう。

そこでおすすめなのが実務型顧問という働き方です。培った専門知識やスキルを、企業の課題解決に役立てることができるのでやりがいもあり、頑張った分だけ報酬を稼げるチャンスがあります。年齢関係なく生涯現役で働けるので、選択肢の一つとして視野に入れてみてはいかがでしょうか。

実務型顧問の働き方や給料については、こちらの記事も参考に。

【実務型顧問とは】顧問の働き方と給料を徹底解説

まとめ

早期退職と希望退職の違いについて解説しました。早期退職も希望退職も企業の募集に応じて、自らの意思で定年前に退職する制度ですが、募集期間や目的が異なります。どちらも退職の際には割増退職金や再就職支援など優遇措置を受けられるケースが多いですが、応じるかどうかの判断は慎重に行ないましょう。

対象になった時に慌てることのないように、選択肢を増やしておくことが大切です。早期退職後も働く人が多いと思いますが、生涯現役で働きたいと考えているならば実務型顧問がおすすめです。

持っているスキルを企業の課題解決に役立てることができ、頑張った分だけ報酬が期待できます。年齢関係なく60歳を過ぎても働けるので、生涯現役で働きたいと考えている人は、選択肢の一つに入れてみてはいかがでしょうか。