早期退職者の再就職は難しい!?転職以外の道も解説

会社からの早期退職希望者の応募を見て、「自分もそろそろか」などと考えているのではないでしょうか。

特に、ひとつの業務に特化して歴が長いという方こそ、早期退職を希望するものの転職活動や再就職について不安な気持ちを抱えているでしょう。

早期退職希望者が転職する場合、早期退職を決意する年齢や再就職先の会社規模など、さまざまな要因が関係します。

そこで今回は、早期退職者の再就職について、成功している人たちの特徴などを交えながらご紹介します。

転職にこだわらない方法についてもご紹介していますので、転職経験が少ない中、早期退職を検討しているという方はぜひ参考にしてみてください。

早期退職や希望退職者の募集は増えている

東京商工リサーチ」によると、2021年における上場企業の早期・希望退職者募集人数は、10月31日までに72社、1万4,505人にのぼったことが判明しました。

数字だけ見れば少ないのか多いのかわかりづらいかもしれませんが、昨年2020年と同じく70社を超えているという点を見ると、早期退職を促す企業は今後も増え続けるであろうという予測が立てられるのではないでしょうか。

早期退職と赤字はイコールではなくなった

「東京商工リサーチ」が発表した調査では、さらに興味深い内容が記されています。

早期退職はかつて赤字が続く会社が行うものというイメージが定着していましたが、早期・希望退職者を募った72社の中には、黒字をマークする企業も含まれているのです。

現代の「早期・希望退職」というのは、赤字における人員整理にとどまらず、若手との人材を入れ替えるなど企業にとっての中長期的な戦略もあることがわかります。

早期退職希望者の再就職は困難か?

早期退職希望者を募集する企業は一般的に、40代から50代を対象に募集する場合があります。

しかし現実的には、役職定年やリアルな定年を控える50代から早期退職について考えはじめる傾向があると言えるでしょう。

では、早期退職希望者として一般的に募集が始まる40代・50代が早期退職した場合、別の会社で再就職できるものなのかを見てみましょう。

早期退職する年代によっては難しい

(出典:厚生労働省職業安定所 令和元年9月27日「中途採用に係る現状等について」 21ページ

早期退職後に転職活動をした場合、再就職できるかどうかは年代によって異なると言えます。

厚生労働省職業安定所の令和元年版「中途採用に係る現状等について」という資料にある一般的な労働者の中に「転職で入職した人数」がどれくらいいるかを年代別に比率にした「転職入職率」をみると、20代・30代と比較して40代・50代の転職入職率は低くなっていることがわかります。

特に、50歳~54歳の5.3%という転職入職率の低さに注目です。

また、同資料の中には「中途採用の年齢別の採用方針について」の調査結果も閲覧可能です。

「中途採用の年齢別の採用方針について」を見ると、45歳以上では「あまり採用は考えていない」が最多であることもわかります。

このように、早期退職を希望する年代で最も多い40代・50代の年代である場合は、再就職は難しい可能性があることを考慮しなければなりません。

会社の規模によってはチャンスがあるかも

一方で、エン・ジャパン株式会社が転職コンサルタントを対象に行った「ミドルシニアの求人動向」アンケート調査では興味深い内容が書かれています。

前述の調査では再就職が困難である可能性が高かった50代以上を採用する求人が増加傾向にあると感じている人が79%いることが判明しました。

さらに、50代以上への門戸が開かれている要因として、中小企業を中心に50代以上が応募可能な募集があるとのこと。

同調査によれば、「中小企業」の求人が78%、38%がベンチャー企業であることも見逃せません。

この調査結果を見ると、会社規模にこだわらないのであれば早期退職後の転職・再就職は夢ではないことがわかるのではないでしょうか。

早期退職で転職に成功して再就職している人の特徴

統計上、年代としては転職・再就職が難しいとされている早期退職希望者が多い40代50代ですが、実際に成功している人は一定数存在します。

早期退職で実際に転職に成功している人たちには、以下のような特徴があります。

  • 他社で活かせる経験や知識をアピールできている
  • マネジメントや指導経験がある
  • 業界内での人脈を活かして働ける
  • 謙虚な姿勢
  • 自身の経験値を書類でアピールできる人

それぞれについて詳しく見てみましょう。

他社で活かせる経験や知識をアピールできている

現職で培った経験や知識を、転職活動中に上手にアピールできている人ほど、早期退職後の転職活動も有利に働くと言えます。

転職採用の現場は、これまでの知見や経験を活かすことで即戦力となる「経験者」を中途採用する会社が多くなりがちです。

早期退職を希望するか迷う年代の方こそ、業務内でのプロジェクトや商談などを成し遂げたという成功体験や失敗談だけでなく、業務から得た知識が多くあるハズです。

知見や経験は裏切らないもの。

これまでの経験と知識を明確にわかりやすく、採用担当者や転職エージェントの担当者など相手に伝えられれば採用率も上がるでしょう。

マネジメントや指導経験がある

マネジメントや部下などへの指導経験があるという場合も、転職や再就職に有利です。

ミドル世代の求人を求めている会社は、後輩育成や急に辞めてしまった管理職の穴を補填するために転職エージェントなどを使って募集していると考えられます。

前述のとおり、マネジメントや指導経験をこれまでの業務で得た知識と組み合わせれば、転職希望先へのアピール材料になるかもしれません。

業界内での人脈を活かして働ける

早期退職対象者の中には、自身の所属する業界内に人脈を持っている人も一定数いますので、人脈を持っているという場合は採用の現場で有利に働くでしょう。

ベンチャー企業や中小企業の中でも特に新規事業を検討しているような場合は、業界や顧客ネットワークを豊富に持つミドル世代を採用したいと考えている可能性が考えられます。

自身が持つ人脈を、採用先の企業でどのように活用できるかもまとめておくと、転職活動で差がつく要素として活用できるでしょう。

謙虚な姿勢

エン・ジャパン株式会社が転職コンサルタントを対象に行った「転職先で活躍できるミドル」という調査によると、転職先で活躍するミドルが実践していることとして以下の項目がトップ3に登場しています。

  • 「社内でのコミュニケーション」…71%
  • 「転職先企業の企業文化理解」…58%
  • 「わからないことを素直に認めて教えを乞う」…45%

再就職で活躍するミドル世代は、常に謙虚な姿勢を忘れずに、社内でのコミュニケーションや企業文化理解を積極的に行っていることがわかります。

一方で、活躍できない人は「前職と再就職先の企業を比較して悪口を言う人」「これまでの実績や経験をひけからす」などが入っていることからも、いくつになっても素直さは大事だと納得するアンケート結果なのではないでしょうか。

自身の経験値を書類でアピールできる人

これまでにご紹介した特徴をきちんと書類でアピールできている人は、早期退職後でも転職に困らないでしょう。

特に50代の場合は書類選考で落ちることが多く、インターネットメディアでも注目されていることがわかります。

書類選考で落ちてしまうということは、自己PRなどの書類の書き方や自身のスキルの伝え方が相手目線ではないことが原因のひとつです。

転職の採用担当者は、あなただけの書類を見ているわけではありません。

自分の知見がどんな風に役立てるのかが明確でないと、自身の経験値を持ってどのように役立てるのかが伝わらないものです。

また、文面だけでなく、謙虚な姿勢で採用の現場に赴くことも重要だと言えます。

再就職に有利になる早期退職希望者が知るべき転職以外の道

ここまで転職や再就職をメインにお話ししましたが、再就職は会社員として転職することだけではありません。

早期退職者は転職以外にも以下の道が用意されています。

  • フリーランス(個人事業主)
  • 起業
  • 投資
  • 資格取得
  • 実務型顧問

それぞれについてご紹介しますので、転職活動と併せてぜひ検討してみてください。

フリーランス(個人事業主)

早期退職前にフリーランスとして独立しても活躍できそうな仕事にチャレンジし、早期退職をめどに本格的にフリーランス(個人事業主)にシフトすることも可能です。

最近では、クラウドソーシングサービスを活用することで誰でも気軽にフリーランス(個人事業主)を体験できるプラットフォームも増えています。

また、「脱サラ農業」という言葉も登場したことで、農業という道も注目を集めています。

フリーランス(個人事業主)は会社員と異なり給与というものではなく、報酬という形で成果に対してお金が支払われるという賃金形態が一般的です。

ただし、自身が業務をやった分だけ稼げるものの、会社員の給料と異なり収入が安定しないということを覚えておかなければなりません。

早期退職を検討する前に準備や業務体験を少しずつ始めたり、ある程度の貯蓄を貯めてから仕事にチャレンジするなどして、向き不向きを確認する事をおすすめします。

起業

人脈や業務内容・資金などに折り合いがつくのであれば、自身で会社を立ち上げる起業もおすすめです。

最近では、「マイクロ法人」と呼ばれる1人で社長と社員をこなす起業形態も知られるようになりました。

起業の場合、自身の事業が軌道に乗るまでは家族の支えや補助金の活用が必要になるでしょう。

また、収入ゼロということも有り得ますので充分な生活防衛資金を用意してからスタートさせるとリスクも少なく起業できるため、資金の確認は徹底することをおすすめします。

投資

資金やローン完済などで生活に余裕がある場合は、早期退職前に投資をスタートして軌道に乗せておくことも手段のひとつです。

  • 株式投資
  • 不動産投資
  • 積み立て投資

などが初心者におすすめだと言えます。

特に不動産投資の場合、準備は必要ですが投資規模が大きくなると自分が大家になることも夢ではありません。

投資をスタートする際は、自身でも良く勉強したり情報収集したりして、信頼と実績のある投資会社をよく吟味することがポイントです。

資格取得

生活資金などに余裕があれば、早期退職後に転職活動せず、資格取得を目指すのも良いでしょう。

再就職に有利になる資格やフリーランス・起業にも役立ちそうな資格をとることがポイントです。

取得しやすい国家資格を狙ってみるのも良いでしょう。

ただし、資格を取得したからと言って、必ず就職や起業できるわけではないため、慎重に検討する必要があります。

実務型顧問

実務型顧問という働き方もおすすめです。

実務型顧問とは、他の企業の問題点や新規事業開拓などを自身のこれまでの知見や経験で解決する仕事で、働き方は前述のフリーランス(個人事業主)に似ています。

実務型顧問になるには特別な知識や資格は不要です。

転職と同じように顧問派遣会社に登録したうえで紹介を受けていくため、ある程度会社でキャリアを培った方にとって、チャレンジしやすい仕事だと言えます。

計画性がない早期退職は失敗のもと!

「今の現状から抜け出したい」

「さっさと会社を辞めて、人生の楽園を謳歌したい」

などといった一時の気持ちだけで早期退職すると失敗しやすいため、注意が必要です。

早期退職する場合は入念な資金の確認やライフプラン設計・家族との話し合いなどをしながら、じっくり考えて決断することで失敗しづらくなるでしょう。

当メディア「顧問ライフ」でも、本記事以外にも早期退職に関する記事がありますので、早期退職を検討している方は併せてご覧ください。

安易に早期退職したらその後どうなる?向いている人とそうでない人

失敗しない早期退職制度の活用方法【一度はじっくり考えたい】

まとめ

最近の早期退職は、赤字に伴うミドル世代の人員整理という意味合いだけでなく、黒字企業が積極的にミドル世代に新しい道を早期に提示するという意味でも使われるようになりました。

ミドル世代が早期退職をしたとしても、自身の経歴を適切にアピール出来たり、会社の規模にこだわらないなどの謙虚な姿勢でいれば、再就職の道は開けるでしょう。

もちろん、転職にこだわらずに新しい道を選択することも手段のひとつですが、入念な準備と計画・家族との話し合いを経たうえで選択することをおすすめします。