定年後の不安で多く聞かれるのが、仕事や収入面に関しての悩みです。
- 60代を過ぎると正社員は難しいのか
- フルタイムで働いても年収は下がってしまうのか
- 年収が下がってしまったら、どのように対処すれば良いのか
定年が近くなるにつれて、このような不安や悩みを抱える人が増える傾向にあります。では働くシニアの現状はどのようになっているのでしょうか。
今回は定年後の年収に関する現状とその理由、仕事の選択肢とそれぞれの目安となる年収について解説します。
記事の後半は年収ダウンへの対策や、シニアだからこそ稼げる可能性のある仕事についても触れていますので、ぜひ最後までご覧ください。
定年後の年収は下がっている人が多い
定年後も働く人が増えていますが、年収は定年前に比べて下がっている人が多いようです。
年収ダウンの厳しい現実
厚生労働省の令和元年の賃金変動状況のデータを確認すると、60歳から64歳の67.6%は前職に比べ年収がダウンしたと回答しています。増加したと回答した人もいますが、その割合はわずか8.9%でした。
参考:厚生労働省「2019 年(令和元年)雇用動向調査結果の概要」
このことからみても定年後は、多くの人が年収ダウンしているとしているということがわかります。
短時間勤務などにより年収がダウンしている背景もある
データを見ると確かに多くの人が年収ダウンしていますが、これは決してネガティブな理由だけではありません。
確かにフルタイムの仕事を選択したのに、年収がダウンしたという人もいます。しかし定年後は自ら希望して、フルタイムではなくパートやアルバイトなど非正規の仕事に切り替えている人も多いです。年収が下がっているのはそのような背景もあるので、あまりデータを気にせず自分は老後どのくらいの収入が必要なのか把握して、仕事を選ぶことが大切です。
定年後の仕事の選択肢と年収について
ここでは定年後にどのような仕事の選択肢があるのかと、それぞれを選択した場合の年収の目安について解説します。
再雇用
再雇用とは定年退職後に、同じ会社で新たに雇用契約を結び、働ける制度のことです。これにより慣れた会社で引き続き仕事することが可能となりますが、新たに雇用契約を結ぶという特性上、雇用形態や勤務時間などは定年前と全く同じとは限りません。
雇用形態が正社員から契約社員やパートなどになれば、年収が下がることもあります。その額は、定年退職前の4割~8割程度の給与と企業により幅があるようです。
ただし現在、同一労働同一賃金が施行されており、再雇用制度もこの対象です。これによりあまりに不合理な条件での再雇用は違法となる可能性もあるので、今後の再雇用の待遇については、今よりも改善するかもしれません。
再就職
定年退職したら、これまでとは違う会社に就職・転職する人も多くいます。年収は正社員か、パートやアルバイトなどの非正規社員かによって大きく異なりますが、正社員の求人は少ないのが現状です。
もし正社員を目指すのであれば、これまでのスキルや経験を活かせるような仕事だと有利になりやすいでしょう。とはいえ新しい職場でゼロからのスタートとなるので、年収は大きく下がることがほとんどです。年収が定年退職前の半分になったという人もいます。
パートやアルバイトの場合は時給800円~1,000円程度が相場となり、月に6万~10万円程度の収入になるでしょう。
独立・起業
これまでの経験を活かして自分のペースで働きたいと考えているならば、独立や起業も一つの方法です。自分のライフスタイルに合わせて働くことが可能であり、軌道に乗れば年収1,000万円以上を稼ぐこともできます。
ただしすべてを一人でやらなければならず、軌道に乗るまでは収入も安定しません。月収5万円以下という人も、途中で挫折してしまう人も多くいます。
独立・起業を目指すのであれば、今から綿密な計画を立て、人脈を広げたりスキルを磨いたりすることが大切です。計画性のない独立はリスクが高いので、思いつきで独立するのは避けましょう。
定年後の年収ダウンにどう対応する?
年収がダウンしたら、若い時であればかけもちして働くということもできましたが、60代を過ぎるとそうはいきません。しかし必要以上に不安になることはありません。しっかりと準備することで対処できます。
給付金の活用
年収が下がった分は給付金を上手に活用しましょう。働く高齢者向けの給付金には次のようなものがあります。
- 高年齢雇用継続基本給付金
- 高年齢再就職給付金
- 高年齢求職者給付金
「高年齢雇用継続基本給付金」とは、再雇用で同じ会社に勤めている人がもらえる給付金です。継続して5年以上雇用保険に加入していて現在も加入している、賃金が75%未満に下がった場合に受け取れます。
「高年齢再就職給付金」とは、60歳以降に再就職した場合にもらえる給付金です。こちらは以前の賃金が75%未満に下がったという条件の他、被保険者の期間が5年以上、失業した時にもらう基本手当を受給していないなどの要件を満たすと受け取れます。
「高年齢求職者給付金」は、65歳以上で働く意思がある失業状態の人がもらえる給付金です。失業状態だとハローワークから認定されることで受け取れますが、病気で療養中の場合や、定年退職後に働く意思がない人は受け取れません。
年金
働いていると年金がもらえないのでは?と思っている人もいるかもしれません。実は働きながらもらえる「在職老齢年金」というものがあります。
もらえる額は、老齢厚生年金と給料の額に応じて決定されますが、年金基本月額と総報酬月額相当額が一定の金額を超えると減額や支給停止となります。その後、退職して再就職しなければ年金額は元に戻ります。
生活費の見直し
収入を得ることも大切ですが、これまでの生活費を見直すことも大切です。これを機にローンや保険料など支出を見直してみましょう。
通信費などの固定費も、安いプランに変えることでグッと家計の負担が減ります。自動車もたまにしか使わないのであれば、手放して必要な時だけ使えるカーシェアを検討してみるのもおすすめです。収入が減ったとしても、支出も減れば生活への影響は少なくてすみます。
退職後になって慌てないように、余裕のあるうちに少しずつ資産形成しておくのも一つの方法です。
年収アップも可能な「実務型顧問」という働き方
生涯現役で稼いでいきたいと考えるならば、実務型顧問という働き方を選択肢に入れてみてはいかがでしょうか。これまでの経験を活かし、大きく収入を得られる可能性があることから少しずつ人気を集めています。
実務型顧問は定年後の働き方として注目されている
定年後の新しい働き方として注目されている実務型顧問。専門知識を活かして助言をし、企業をサポートする仕事ですが、現場と一緒に実務にも携わるという特徴があることから実務型顧問と呼ばれています。
顧問と企業をマッチングする派遣サービスも増えてきており、コツコツサラリーマンとして勤めてきた人が、これまでのキャリアを活かして働ける新しいカタチとしてひそかに人気を集めています。
顧問という仕事については、こちらの記事も参考に。
会社員時代よりも年収がアップするチャンスも
顧問の報酬は企業との業務内容や出社日数によって異なります。相場としては、1社との契約につき30万~40万となります(月2回出社が条件の場合)。ただしこれは企業と直接契約した場合で、派遣サービスを通した場合は派遣会社と報酬を分けるので、顧問の取り分は9万~20万円といったところです。
少ないと感じるかもしれませんが、顧問は企業と契約できる数に制限はありません。つまり1ヵ月10万円の顧問契約を5社と結べば、月収は50万円になりますし、やり手の人はもっと稼いでいる人もいます。やり方次第で現役時代よりも年収アップを狙える可能性があるのが、実務型顧問という働き方です。
顧問の報酬については、こちらの記事も参考に。
【会社顧問の報酬まるわかり】実務型顧問の相場と必要な考え方を解説
まとめ
定年後の年収の現状と、対処法について解説しました。データを見ると60歳以降の約7割の人が、前職より収入が減ったと答えています。正社員だった定年前から再雇用やパートへ切り替えると、これまでの年収を維持するのは難しいかもしれませんが、それを補うために給付金や年金制度があります。
これらの制度を知り正しく理解することで、老後の不安も少し減るのではないでしょうか。生活に関する固定費などの支出を見直すことで、家計への負担も減らせます。これを機会にぜひ見直してみてください。
生涯現役で仕事したいと考えている人は、実務型顧問という働き方がおすすめです。自分のライフスタイルに合わせて働くことができ、がんばり次第で大きく稼ぐチャンスがあります。これまでのスキルを活かして企業に貢献できるというやりがいもあるので、将来の選択肢にいれてみてはいかがでしょうか。