会社における社外取締役とは?顧問との違い、要件、報酬について

シニア層の人材登用が進む中、今「社外取締役」や「顧問」という立場で働く人が増えています。なんとなく上層部の仕事だというのは想像がつくものの、明確にその役割の違いが分かる人は多くないでしょう。

ここでは「社外取締役」と「顧問」の違い、「社外取締役」の要件や報酬、導入ケースなどについて解説していきます。

社外取締役とは?求人はある?

社外取締役は経営の現場で働く専門家

 社外取締役とは、「経営の現場で働く専門家」です。企業がさまざまな業界の意見を取り入れやすくなるように取り計らう役目を担っており、各企業が新規事業へ挑戦する際の原動力にもなっています。

 そもそも取締役会とは、会社での経営戦略や運営の方針を決定する場です。業績の報告、特別な重要事項を、「取締役」数名で決定します。その「取締役」は社内から選出される人と社外から選出される人の両方で構成されます。なぜ社外の人が経営に口を出すの?と疑問に思うかもしれませんが、実は「社外取締役」はとても重要な存在なのです。なぜなら社内の人だけでは意見が偏ることがあるからです。

会社はフラットな目線でリスクを判断したり、意見をもらう事が必要です。また昨今、各企業が盛んに新たな事業へ参画する機会が増えたため、それに伴い「社外取締役」もさまざまな業界経験者から選ばれることが増えています。

2015年、2021年と社外取締役の要件が厳密になり注目を集めている

 「社外取締役」とは、企業とは関係のない立場の第三者から選ばれる取締役です。その企業でなくても、グループ企業や親会社の人も社外取締役にはなれません。それが2015年施行の会社法改正でその要件はより厳密になりました。この改正のポイントは「監督機能の強化」です。

その企業・グループ企業・親会社の人はもちろん、その配偶者また二親等内の親族までもが社外取締役には就けなくなり、取締役は3人以上のメンバーからなり過半数の2人以上が「社外」であることという条件も加えられました。

 また2021年3月の再改正では、「上場企業の社外取締役設置を義務とすること」と規定されました。2015の改正時はまだ株主総会で理由を説明すれば「社外取締役を設置しない」状態も許されていましたが、上場企業においては完全に義務となりました。

このように今、外部からの「社外取締役」活用を促進する働きかけが進んでおり、注目を集めるのに伴いその求人も増加しています。       

社外取締役と顧問、相談役の違いとは?

 ポイントは3点あります。意思決定権、会社法、活躍の場です。

①社外取締役は「意思決定権あり」、顧問・相談役は「意思決定権なし」

 社外取締役は経営責任が伴いますが、顧問・相談役は経営責任はなく、あくまで経験や知見を生かしたアドバイスをする立場です。顧問はさらに人脈を生かした「顧客の紹介」という役割も担っています。

②社外取締役は「会社法で制定」、顧問・相談役は「会社法で制定はなし」  

 会社法で制定されていない顧問や相談役については、設置するかしないかは各企業の自由ですが、社外取締役は会社法で制定されているため設置は必須です。

③社外取締役は「経営」、顧問は「現場」で活躍

 主に社外取締役は経営部門、顧問は各現場部門にその活躍の場を見い出します。また相談役は、各部門で臨時で起きる問題(例:著作権侵害など)を取り扱うので、さまざまな部門と関わりを持ちます。

社外取締役の要件

 社外取締役は、取締役会の運営を健全にするため、会社とは無関係の人材を選ぶ必要があります。このような観点から、会社法2条15号にその要件が定められています。

【現在要件】

① 当該株式会社又は、その子会社の業務執行取締役ではないこと。

② 当該株式会社の親会社等(自然人であるものに限る。)又は親会社等の取締役若しくは執行役若しくは支配人その他の使用人ではないこと。

③ 当該株式会社の取締役若しくは執行役若しくは支配人その他の重要な使用人又は親会社等(自然人であるものに限る。)の配偶者又は2親等以内の親族ではないこと。

【過去要件】

① その就任の前10年間当該株式会社又はその子会社の業務執行取締役であったことがないこと。

② その就任の前10年内のいずれかの時において、当該株式会社又はその子会社の取締役、会計参与又は監査役であったことがある者(業務執行取締役であったことのある者を除く。)にあっては、当該取締役、会計参与又は監査役への就任の前10年間当該株式会社又はその子会社の業務執行取締役であったことがないこと。

※参考:法務省、社外取締役及び社外監査役の要件等が改正されました(平成27年5月1日から)》  

しかし、このように会社法で定められているにも関わらず、これらの要件を満たさない企業はまだまだ多いようです。(ただし、上場企業については2021年より完全に義務となりました)その背景には、経営層の守りの姿勢があります。社外取締役が行う「助言」と「監督」のうち、助言は受け入れられるが監督されては困るという考え方がいまだにあるからです。

一方で、今までのように「会計士、弁護士」というカテゴリー別の人材からの登用だけでは対応が仕切れないであろうという不安が経営層にあるのも事実です。今、さまざまな分野を熟知し豊富な経営経験を持つ対応力のある社外取締役が求められ始めています。

社外取締役の報酬

 社外取締役は、1~2年の任期があり、任期満了の度に更新を行います。報酬は企業や業界によってもバラつきがありますが、朝日新聞と東京商工リサーチが調査した結果(2018年)によると、平均は年額で663万円を受け取ることがわかっています。近年ビジネスがグローバルになっていく状況を鑑み、社外取締役の報酬も海外の基準となり、3,000万円台の報酬を出す大企業もでてきています。   

社外取締役の導入ケース、実績

 実際にどのような形で社外取締役は活躍されているのでしょうか?導入ケース、実績を見てみましょう。

《導入ケース1》

M&Aキャピタルパートナーズ株式会社 

業種: 法人サービス

《BEFORE》

ガバナンス強化に向けて監査役、社外取締役をそれぞれ選任する必要があったが、社内の人脈経由で探すには限界があった

 ↓

《AFTER》

経験の豊富な専門家が監査役、社外取締役に就任。40代を中心とした若い経営幹部へのノウハウ継承も

進んでいる

《導入ケース2》

Chatwork株式会社

業種: 広告・情報通信サービス

《BEFORE》

上場に向け、常勤監査役を探していたが、各方面にあたってみたものの、条件に適した人材を見つけられずにいた

 ↓

《AFTER》

経営経験だけでなく海外業務経験も豊富な専門家が常勤監査役に就任。社内体制の整備が軌道に乗ると同時に、スピード感と慎重さを両立した経営判断が行えるように

(引用:i-common 社外取締役・社外監査役の導入実績より

これらのケースはどちらも第三者機関に人材選出を委ねたパターンです。経営層のトップなどの友好関係者からの紹介との違いは、1つは紹介者に対する過剰な配慮の必要がなく、ベターではなくベストな人材がえらべるということ。

もう1つは、条件に合わない人材が候補に上がった場合も、明確に断れるということです。友好関係からの人材紹介は「支援」という意味合いが強くなりがちで、ベストマッチな人材ではないのに、断ることもはばかれるという負の状況が生まれやすいのが特徴です。

社外取締役は「実務型顧問」から選ばれ始めている

「実務型顧問」登録情報からの選出が増えてきている

 前述したように、高いスキルと専門的知見を持った人を必要とする場合、友好関係者からの紹介や、業界で活躍する人材をスカウトする方法もありますが、最近では「実務型顧問」として第三者機関に登録する人を「社外取締役」として迎え入れるケースが増えています。

「実務型顧問」といっても、登録している人の背景はさまざまです。経営層で取締役として活躍してきた人から、高いスキルをもつエンジニアまでいろんなタイプの人が存在します。高い専門性を求めるのであれば、実務に特化した人から選ぶことで業務改善などの役割も期待できるでしょう。

「社外取締役」は、マッチング顧問サービス利用がおすすめ

 おすすめしたいのは、マッチング型の顧問紹介サービスです。パソナの「パソナ顧問ネットワーク」、エスプールの「プロフェッショナル人材バンク」、i-common、顧問バンクなど「実務型顧問」が登録できる派遣会社が増えてきています。これまで「顧問」や「社外取締役」などを迎え入れたことのない企業も、過去に迎えいれたもののうまくいかなかったという企業も、十分検討する価値があります。「社外取締役」として活躍したい人はぜひ登録することをおすすめします。

まとめ

 今は、なれ合いからの弊害を伴うような「社外取締役」をいつまでも据えておけるような時代ではありません。経営の爆走を止めるための歯止めとなったり、遠慮がなく発言できる人材こそが社外取締役としてあるべき姿です。

社外取締役だけでなく、高い専門性をもった実務型顧問という枠組みにまで視野を広げて活動することで、あなたにぴったりな役職のオファーが舞い込んでくるかもしれません。