「顧問」は今なぜ企業に求められるのか?役割や報酬、立場を徹底解説

企業経営などに助言をする「顧問」。

かつては役員クラスの人が就任するイメージの強い役職でしたが、昨今はさまざまな業界で新たな形の「顧問」が求められているのをご存じでしたでしょうか?いわゆる普通のサラリーマンだった人がなる「実務型顧問」です。ここでは、「実務型顧問」の概念をもとに、「顧問」の役割、報酬、立ち位置などについて徹底解説します。これを機にあなたも自分のスキルや経験を生かして「顧問」を目指してみませんか?

「実務型顧問」の役割とは?

 「顧問」といえば、大企業の役員職を経験した人が、引退後にその人脈を生かして務める「顔役」としての役割のイメージが圧倒的でした。しかし「実務型顧問」となると違います。「実務型顧問」とは『専門知識を生かして現場に立ち、メンバーともに課題解決にあたり会社を支えるエキスパート』です。

 いわゆる「顔役」が上位の立ち位置で「外部の人脈開拓」や「経営戦略に助言」するのに対し、実務型顧問は、現場にメンバーとともに立ち「課題を通した経営戦略に参画」します。また「実務型顧問」は、役員職を経験した人や引退した人だけが就任するのではなく、専門知識を持った人なら若い人でもチャレンジできるという点も大きな特徴です。

なぜ今「顧問」が求められるのか?

 理由は2つあります。1つは、人工知能(AI)技術などの進化により事業サイクルがめまぐるしく変化。各企業は常にスピード感のある事業判断が求められ、助けを必要としているからです。しかし次から次へと湧き出る新たな領域の知識を一から学んでいては、到底時代の波に追いつけません。そこですでに専門知識を持った人を迎え入れ、長年の経験ゆえにできる的確なアドバイスを受ける事で、高速で変化する事業サイクルに耐えうる体制をつくる事を目指しています。

 もう1つは、深刻な人材の不足にあえいでいる企業が増えているためです。少子化問題を受けますます、労働力人口は減少していくと予測されています。そんな中「いかに少ない人数で生産性を上げるか」というのは1つの大きな課題ですが、経営面だけでなく「生産性UP」という点においても「実務型顧問」の持つスキルやノウハウが大変役に立つと注目されるようになりました。

今は、どのような業務で「顧問」を求められているのか?

 いわゆる今までの「顧問」というと、頭に浮かぶのは「人脈を生かした新規販路の開拓」や「経営戦略の策定支援」という役割が主ではないでしょうか?しかし今はこんな業務においても「顧問」は求められています。

マーケティング戦略支援

コスト削減

人事分野支援

海外進出

製造工程のプロセスエンジニアリング

技術者の指導

新規商品の開発 など

最近では経営部門や営業部門だけでなく、技術部門を支援する「技術顧問」の求人も多くなってきています。「技術顧問」というと、技術の専門性にフォーカスした支援がイメージされますが、実際の課題の背景には多くの別要因(人的なリソースの不足や、他社の知的財産権の問題など)がはらんでいる事が多く、それも解決しながら最良の手段を選ぶ必要があり、技術以外の幅広い知見が必要です。

たとえ「実務型顧問」という名がついていたとしても、ある業務に特価をするスキルやノウハウだけでなく、やはり「経営戦略を担う者」としての全体的な広い視野が必要なのは言うまでもありません。しかし今後も技術顧問のような「実務型顧問」のニーズはますます増え続けていく事が予想されます。

「顧問」の報酬の相場とは?

 「顧問」は、常勤か非常勤・雇用形態(顧問派遣会社を通すか通さないかなど)・内部か外部顧問か、などにより報酬はさまざまです。以下ほんの一例でしかありませんが、おおよその相場を業務別に見ていきましょう。

  • 経営コンサルタント…月20~50万円程度
  • 弁護士…月5万円程度
  • 税理士…企業年商により決定
  • 営業顧問
    • 月型固定報酬 月10~50万円程度
    • アポイント成果報酬型 月数万円~10万円程度 
    • 売上成果報酬型 売上金額の10~50%程度
  • 技術顧問 
    • 「常勤」…年間500万円~1000万円もあり
    • 「非常勤」…月2~4回程度の出社で月9~20万円程度 

(参考:顧問バンクホームページより)

特に技術顧問などは業界により報酬の相場は全く違ってきますし、他業務でも担当する内容により報酬は変わります。一般的には優れたスキルを持ち、経験が豊富な人の採用ほど報酬が高額です。契約前に必ず報酬を確認しましょう。金額的にも50~60代で行うアルバイト代よりは高額になる事が多く、やりがいもあり、ミドル・シニアの新しい働き方としては大変魅力的と言えるのではないでしょうか。

顧問の立ち位置とは?

 顧問と間違われやすい役職として、相談役・役員・参与などがあります。それぞれがどのような位置づけにあるのでしょうか?確認しておきましょう。

●顧問…事業成長にむけた日常的な経営や事業の補佐や指導、助言(意思決定権:なし)

●相談役…臨時で起こる問題に対する助言(意思決定権:なし)

例えば、情報ろうえいや著作権侵害などの問題発生時に助言を行います。一般的に、重役経験者が退任後に就任する場合が多く、顧問より名誉職の意味合いが強い役職です。

● 役員…業務を監視し経営方針を決める(意思決定権:あり)

「取締役」「監査役」などというように、「日本の会社法で定義されている」、「また経営方針を決める意思決定権がある」という点が、顧問や相談役とは異なります。

● 参与…専門分野の高い能力を持ち、部下を持たずに特定の業務管理を行う(意思決定権:あり)

社内の規定に基づき、管理職と同じレベルの専門知識があると認定された職能資格です。こちらも「日本の会社法で定義されている」「意思決定権がある」という点が顧問とは異なります。

顧問は経営方針を決定する権利はありませんが、補佐・指導・助言という要するに「アドバイザー」的な立ち位置と言えます。会社法で定められた役職ではありませんので、設置するかどうかは各企業の自由と言えます。

また、顧問には「内部顧問」と「外部顧問」があります。内部顧問は、おもに元役員の方が就任されるケースが多く、企業によっては大きな発言力を持ってしまうこともあります。いくら、「顧問には意思決定権なし」と言っても、実際の現場においては内部顧問の意見を無視するわけにはいかず、結果的に決定権がある状態になり、経営方針決定が遅れてしまうことも。こういったリスクを回避するためにも外部から適した人材を招きいれる「外部顧問」の登用が注目されています。

最後に

 実務顧問として働きたい!と考える方は、顧問派遣会社に登録するのが近道です。パソナの「パソナ顧問ネットワーク」、エスプールの「プロフェッショナル人材バンク」、i-commonなど派遣会社も増えてきています。登録すると要件に合った会社が紹介され、面接を経験したのちに働き始めます。

ただし、登録人数は8~9万人もいますが、実際に稼働しているのは5%程度です。そんな中でも選ばれて勝ち残る1人になるためには、年齢に関係なく、「いつも新しい情報をインプットし、自分のスキルを磨き続ける」そのポジティブな気持ちが大切です。責任も大きいけど、やりがいたっぷりの「顧問」。ミドル・シニアの皆さん、新しい働き方の選択肢としてトライしてみてはいかがでしょうか。