役職定年とは、退職を伴う定年を迎える前に役職を離れて一般社員に戻る制度です。企業の活性化、コストの削減など企業にとってメリットがある一方、役職定年の対象になった人からはつらいという声も聞きます。
今回は役職定年はなぜつらいのか、その後どのような選択肢があるのかについて解説します。おすすめの働き方についても解説していますので、役職定年に不安を抱えている人はぜひ最後までご覧ください。
なぜ役職定年後はつらいといわれているのか?
役職定年を迎えた後も本当の定年を迎えるまでは働き続けることができますが、なぜつらいと言われているのでしょうか。それは次のような可能性があるからです。
- 年収が大きく下がる可能性があるから
- 居心地が悪くなる可能性があるから
- やりがいがなくなるから
- 部署を異動させられる可能性があるから
順番に解説していきます。
年収が大きく下がる可能性があるから
つらいと言われている原因の中でも多く聞かれるのが「年収が下がったこと」です。役職を外れると、これまであった役職手当がなくなります。基本給も下がるでしょう。
基本給が下がれば、ボーナスが下がる可能性も高いです。公益財団法人ダイヤ高齢社会研究財団の調査によると、なんと役職定年を迎えた人の9割が年収ダウンしたと回答しています。
役職定年後も年収を維持する企業もあるようですが現状は少なく、あまり期待はできないでしょう。役職定年の対象となる可能性がある人は、将来のライフプランを考え直す必要があるかもしれません。
居心地が悪くなる可能性があるから
役職定年を迎えた後、居心地が悪くなってしまったということも、よく聞かれる原因の一つです。昨日まで部下だった人が新たに上司となることも多く、部下のことを「○○部長」と肩書付きで呼ばなければならない可能性もあります。
昇進した部下も上司として舐められてはいけないと、それらしく振舞うことがあるでしょう。立場が逆転したことを目の当たりにしてプライドが傷ついたという人も多いようです。
中には役職定年を受け入れられず現役時代と同じ振る舞いをした結果、周囲との雰囲気が悪化し、居心地が悪くなってしまったという人もいます。
やりがいがなくなるから
前述の「年収ダウン」「居心地が悪くなった」ということが重なれば、仕事へのモチベーションが下がってしまうのは当然の事といえます。
周りからも期待されず、現役で役職者として働いていた時のような責任感もなくなってしまうので、これまでのようなやりがいはなくなってしまうでしょう。
定年までの残りの期間をどのようなモチベーションで働けば良いのか悩む人もいるようです。
部署を異動させられる可能性があるから
役職定年を迎えた後も同じ部署で働き続けられるとは限りません。これまでとはまったく別の部署に異動させられる可能性もあります。
居心地が悪くならないようにという企業側の配慮かもしれませんが、これまで続けてきた仕事ができなくなることがつらいという人もいます。
確かに経験を積んでスキルを磨き、やりがいを感じていた仕事ができなくなってしまうというのはモチベーションが下がる原因となります。新しい仕事を覚えなければならない大変さもあるでしょう。
スキルを活かした仕事がしたい!どうするべき?
役職定年を迎えても居心地が変わらず、スキルを活かした仕事ができるならば良いのですが、難しくなった場合どうすればよいのでしょうか。ここではスキルを活かした仕事を続けたいという人の選択肢を2つ紹介します。
これまでのスキルが活かせる企業へ転職する
このまま今の会社にいてもモチベーションが上がらず、つらい思いをし続けるというのであれば、役職を持っているうちにスキルが活かせる企業へ転職するのも一つの方法です。
「50代になって転職活動しても採用してくれるところなんてあるのだろうか…」という不安もあるかもしれません。しかし経験豊富でプロの知識を持っている50代を求めている企業もあります。
とはいえ50代といえば定年までそう長くはありません。少しでも若いほうが長く働いてくれると判断されるので有利となります。また役職がある時のほうが即戦力としても認められやすいでしょう。
活躍できる場は今の会社だけではありません。実績がある人向けのハイクラス求人専門の転職サイトもあるので、チェックしてみてはいかがでしょうか。
独立・起業する
制度や年齢に縛られず自分のペースで働きたいということであれば、独立・起業もおすすめです。組織で働いていると、定年などで区切られてしまうことがほとんどですが、独立すればそのような区切りもなく働きたい年齢まで働けます。
これまで築いてきた人脈や専門スキルがあれば、選択肢にいれてみてはいかがでしょうか。やり方によっては会社員時代よりも稼げる可能性があります。
ただし独立・起業は定年や面倒な縛りはありませんが、その代わり福利厚生もボーナスも安定した給料もありません。無計画な独立は大きなリスクを伴います。起業計画をしっかりと立て、リスクに対する対策をした上で実行しましょう。
役職定年後に活躍!実務型顧問のすすめ
まだあまり知られていませんが、50代・60代の人を中心に注目されている働き方があります。それが「実務型顧問」という働き方です。
実務型顧問の役割
顧問とは専門知識やスキルを活かして、企業の経営や事業成長のためのへ助言を行なう立場の人です。
顧問には内部顧問と外部顧問があります。内部顧問とはこれまで社内で役員や管理職などとして活躍してきた人が、退任した後に顧問となる場合です。一方、専門知識や資格を持った外部の人を顧問として招き入れた場合は外部顧問となります。
実務型顧問は外部顧問の一種となりますが、その役割はアドバイスだけにとどまりません。現場の担当者と一緒に伴走し、実務にも携わるのが実務型顧問です。
アドバイスだけではなく、現場で一緒に手を動かしながら企業に貢献してくれる実務型顧問は、企業でも需要が高まっています。
実務型顧問として働くメリット
実務型顧問として働くのは次のようなメリットがあります。
- 自分のスキルや経験を活かせる
- 自分のペースで働ける
- 頑張り次第で大きく稼げる
- 定年がない
実務型顧問として活動するには、企業と顧問契約を結びます。基本的に雇用されるわけではなく業務委託契約となるので、会社員の時のようなボーナスや有休などの福利厚生はありません。しかし会社都合の異動や定年はありませんし、自分のスキルを活かした仕事を自分のペースで行なうことができます。
報酬については後述しますが、会社員時代の給与を越えられる可能性もあります。生涯現役で働きたい50代・60代の人にぴったりといえるでしょう。
実務型顧問になるための流れ
では実務型顧問になるためにはどのようにすればよいのでしょうか。具体的な方法としては、顧問専門の派遣サービスに登録することです。
登録時に面談して自分の強みやスキルをアピールします。派遣会社の担当者が企業とマッチングしてくれるので企業と面談し、条件がお互いに合意すれば顧問契約を結び、活動を始められます。
ここで大切なのが、自分の強みやスキルを把握できているかです。把握できていなければ、登録時に派遣サービスの担当者にうまく伝えられません。うまく伝えられなければ、企業とのマッチングもしづらくなってしまいます。登録する前には自分の強みやスキルの洗い出しをしてみましょう。
顧問派遣サービスの登録については、こちらの記事も参考に。
実務型顧問の報酬
実務型顧問の報酬ですが、契約を結ぶ企業や契約形態によるので一概にはいえません。
顧問派遣サービスを利用した場合、企業からもらった報酬を折半します。もし月2回の出社契約で顧問契約を結んだ場合、顧問がもらえる報酬は10万~20万円が相場となります。直接契約となった場合は折半する必要がなくなるので、もっともらえるでしょう。
また顧問契約を結ぶ数に制限はありません。複数の企業と顧問契約を結ぶことで報酬は上がり、頑張り次第では会社員時代の給料を大きく超える報酬をもらえる可能性もあります。
実務型顧問の詳しい報酬相場については、こちらの記事も参考に。
【実務型顧問の相場を徹底解説!】培ったキャリアで定年後は安泰?
まとめ
役職定年は企業にとってメリットがある一方、対象となった人にとっては「年収が下がる」「居心地が悪くなる」などのデメリットがあり、モチベーションが下がる原因となります。
本当の定年まで働くことはできますが、つらいと感じるならば転職や独立も一つの方法です。どちらもしっかりとした準備は必要ですが、やりがいのある働き方を実現できます。
50代・60代の人に注目されている実務型顧問もおすすめです。自分のペースで働けて、定年や異動に振り回されることはなくなります。
派遣サービスを利用することで顧問先を探すことができますが、マッチングするには自分の強みを派遣サービスの担当者にアピールすることが大切です。実務型顧問に興味を持ったら、まずはこれまでの経験や実績を洗い出してみてください。