役職定年とは?延長はされる?役職定年のメリットや実情も解説

会社で働く中で大きな節目の1つである役職定年。最近では高年齢者雇用安定法によって定年の年齢が引き上げられましたが、役職定年も延長されるのでしょうか?

「役職定年を迎えた後はどう過ごしたらいいのだろう」「人生100年時代というけれど役職定年は延長されないのか?」など、さまざまな不安や疑問を持っている方もいらっしゃると思います。

この記事では、「役職定年の延長はされるのか」「延長されるとどうなるのか」などを解説していきます。これから役職定年を迎える方はもちろん、「まだまだ先のこと」と思っている若い方も、ぜひ最後まで読んでみてください。

役職定年とは

そもそも役職定年制度とはなんなのか?その仕組みや必要性など、基本的なことをおさらいしてみます。

役職定年の仕組み

役職定年とは、部長や課長など役職に就いていた人が、定年前のある年齢に達した時点で役職から外れる制度です。

法律で決まっている制度では無いので取り入れるかについては自由に決められますし、何歳を役職定年にするのかも企業ごとに違っています。

政府の平成29年の「民間企業の勤務条件制度等調査」によると、

  • 役職定年を導入している企業は全体の16.4%
  • 導入を検討している企業は7.3%

という結果でした。

参考:政府統計「平成29年民間企業の勤務条件制度等調査」

また、平成19年に実施した「民間企業の勤務条件制度等調査」によると、部長クラスの役職定年は

  • 「55歳」が一番多い38.3%
  • 「57歳」が次に多い24.8%

という結果になっています。

参考:平成19年政府統計「民間企業における役職定年制・役職任期制の実態」

このように、役職定年の基準は企業によってかなり違います。そもそも制度がない企業も多く、これから導入を検討していく企業が増えてくることでしょう。

なぜ役職定年は必要なのか

役職定年制がはじまったのは、定年年齢が延長されたことの影響が大きいです。

昔は「55歳での定年」が当たり前でしたが、定年の年齢が60歳・65歳とだんだん伸びていき、今では65歳かそれ以上長く現役として働くことも普通になってきています。

社員としては「同じ職場で長く働ける」というのはありがたいことですが、企業にとってはそれだけ人件費もかさみます。そこで役職定年を導入し、「ある時期になると役職から外して給与を下げる」という人件費対策が広がってきました。

また、定年が伸びて高齢社員が役職に就き続けるという状況になると、若手社員の昇進が遅れたり社員の年齢層が偏ったり、いろいろな困りごとが起こります。役職定年には、適度にポストを入れ替えて会社を若返らせるという意味もあるのです。

役職定年のメリット・デメリット

役職定年のメリットとしては、

  • 人件費を節約できる
  • 組織の新陳代謝を促せる
  • シニア社員に時間と心の余裕を与えられる

といったことがあります。

企業側のメリットだけでなく、シニア世代の社員にとって役職定年後は「余裕を持って老後の生活に備える期間」にもなるわけです。

役職定年のデメリットとしては、

  • 仕事のやりがいを見失い、モチベーションが下がる
  • 人間関係が難しい

などがあります。

実際、役職から降りた後に仕事のモチベーションを保つのはなかなか難しく、実際の現場では「やりがいを見失った」「給与が不満」といった声が上がることがよくあります。

また、それまで部下だった社員が昇進して「上司」になることから、人間関係につまずく例もよく聞かれます。

役職定年の年齢は?延長はされる?

定年年齢改正により働く期間が延びることで、役職定年は延長されるのでしょうか?ここでは、延長の可能性について解説します。

一般的な役職定年の年齢は?

先ほどもご紹介した通り、役職定年の年齢は、部長・課長クラスだと55〜57歳くらいが一般的です。

平成19年の「民間企業の勤務条件制度等調査」によると、役職定年の年齢が決まっている企業のうち「55歳未満」のところは全体の1.2%、「59歳以上」は全体の8.2%。

全体を見ると、55歳〜59歳の間に設定している企業がほぼ9割となっています。

役職定年は延長傾向にある

2013年には「高年齢者雇用安定法」によって定年が65歳になることが決まりました。いきなり引き上げるわけにはいかないので徐々に移行していく形にはなるでしょうが、2025年4月にはついに「65歳定年」が義務になります。

さらに2021年に施行された「改正高年齢者雇用安定法」では、定年年齢を70歳まで引き上げる努力義務も追加されました。定年時期はこれからまだまだ延長されていきそうな気配です。

ここで疑問なのが、「役職定年も同時に延長されるのか?」ということでしょう。

役職定年は法律で定まっているわけではないので、年齢などの決まりはありません。導入の仕方もそれぞれの企業に任されているので一概に「必ず延長される」とは言い切れませんが、定年時期にともなって役職定年を延長する企業も多く出てくるのではないでしょうか?

70歳定年制度で55歳が役職定年だと、役職を降りて一般社員になってからも15年は企業で働くことになります。役職を降りた50代以降、15年も一般社員として意欲的に働きつづけられるのかは疑問ですし、収入が急に減ってしまうという問題も出てきます。

社会全体で働く年数が伸びてきていることを考えると、定年延長にともなって役職定年も延長になると考えるのが自然でしょう。

 役職定年が延長されるとどうなる?

役職定年が視野に入る年齢になってくると、役職定年が延長されるとどうなるのかが気になるところでしょう。

役職定年の延長にともなって起こることをまとめてみました。

モチベーションを持って働ける年数が増える

役職定年が延長された場合、今までより長く役職に就いて働けることで、社員にとっては「仕事へのモチベーションを維持したまま長く働ける」というメリットが生まれます。

仕事のモチベーションがなくなるのには、給与ダウン・人間関係の悩み・仕事内容の変化などいろいろな理由があります。

役職定年の実態やその後の選択肢については、こちらで詳しくご紹介しています。

役職定年後の具体的なイメージが分かるので、ぜひこちらも参考にしてください。

役職定年の年齢は何歳?つらい?実態とその後の選択肢について

生涯年収は上がる傾向に

役職定年が延長されると、役職に就いた時の生涯年収も上がる見込みになります。

役職定年後は手当てなどがカットされて給与が大幅ダウンすることがほとんどなので、役職定年が遅れれば遅れるほど生涯年収が上がるのは当然でしょう。

50〜60代での収入減は家計にとって深刻な問題なので、少しでも長く役職に就けると、働く側としてはありがたいですね。

若手社員の昇進が課題

役職定年が延長されることで一番課題になるのが、若手社員の昇進です。

シニア世代の社員が長くポストに居座ると、そのぶん下の社員が昇進する機会が奪われてしまいます。そうなると社員の士気が下がり、優秀な若手が他の企業に移ってしまう原因にも。

定年延長にともない、「若手もシニア世代も働きやすい職場環境づくり」が企業の課題となっていくでしょう。

まとめ

今回は、役職定年についての解説や延長の可能性についてご紹介しました。

今は55歳~57歳で役職定年を迎えることが多いですが、これからの時代の定年延長にともなって、役職定年も延長になる可能性も否定できません。

定年・役職定年の延長にともない、自分の老後をどう過ごしていきたいのか、1人1人が真剣に考えていかないといけない時代になってくるでしょう。

このブログでは、役職定年後におすすめの「実務型顧問という働き方」についてご紹介しています。

実務型顧問という新しい働き方について興味がある方は、ぜひ他の記事もご覧になってみてください。

【新しい安定した働き方】企業の定年後に最適?『実務型顧問』