2019年金融庁公表の報告書の「老後生活が20~30年に及ぶと、公的年金以外に老後資金として1300~2000万円不足する」との記載がニュースで大々的に取り上げられて以来、日本人の定年後の資金に対する見方は大きく変化しました。定年後も豊かに暮らすための方法として「実務型顧問」として働くという選択肢があるのはご存じでしょうか?ここでは、今注目されている「実務型顧問」の役員報酬の相場や、働き方を解説します。ぜひ定年後の資金対策の1つの候補としてご参考ください!
不安視される老後資金
「そもそも老後とはいつからなのか?」その基準は人によりさまざまですが、経済的な面で考えると公的年金が主な生活費となる頃を示すことが多いようです。現在の受給開始年齢は60~70歳の間、2022年にはその幅が75歳までに広がると言われています。令和元年時点の男女の平均寿命は、男性81.41歳、女性87.45歳。仮に65歳から年金を受給開始とすると、おおよそ男性16年、女性22年間に渡り老後生活が続くということです。
しかしその公的年金も、少子化のあおりを受け将来は支給額が減少するのではないかと不安視されています。実際のアンケートでも約8割の人が、老後資金に不安を抱えているという結果がでています。
(引用:アクサ生命保険株式会社「人生100年の歩き方」より)
また、不安の内訳を見てみると「公的年金だけでは不十分」というものが8割を占めます。
(引用:アクサ生命保険株式会社「人生100年の歩き方」より)
では、実際に公的年金以外であとどれくらい資金は必要なのでしょうか?次で具体的に見ていきましょう。
ゆとりのある老後生活のために必要な資金とは?
一般的に高齢夫婦世帯の月額家計収支は平均して「4万1000円不足」と言われています。仮に老後生活を20年と仮定すると
・4万円×12カ月×20年間=960万円
しかしこれはあくまでも最低限の生活をおくるための金額です。もし定年後に旅行や趣味を楽しみたい!と考えている場合はもちろんこれでは足りません。その場合およそ「14万円不足」とされています。
・14万円×12カ月×20年間=3360万円
冒頭で述べた「2000万円~3000万円必要」との金融庁の報告も納得がいく数字となりました。しかしこの3360万円の実際の内訳は、残念ながら「旅行や趣味」といった前向きなものばかりではありません。生活資金や生活資金以外の入院・手術費用、介護費用、がん治療費用、先進医療技術料、死後清算費用など、本人の意思に反してどうしても必要になってくる費用も多く占めています。
ここから考えると、やはりどこの家庭も公的年金以外に月10数万円の収入があると安心という所ではないでしょうか?そこで定年後の資金対策としておすすめしたいのが「実務型顧問として働く」という方法です。
「顧問」の役員報酬の相場・メリット・雇用形態とは?
そもそも「顧問」という働き方はどれくらいの収入を得られるのでしょうか?またメリットや雇用形態についても解説します。
内部顧問と外部顧問
・内部顧問(社内出身者がそのまま顧問を担当するケース)
いわゆる役員報酬並みと言われています。国税庁の「平成30年分民間給与実態統計調査結果」によると、資本金2000万円未満の役員報酬で605万円、2000万円以上の企業では851万円とされています。
内部顧問のメリットは、顧問の人脈を活用できることや、社内トラブルの調停役になるという所です。内部顧問は、名目上は経営を向上させるという役割を担っていますが、実際には退任した役職者のただのポストになってしまっていることが多いのが現状です。これでは責任の所在がうやむ やとなったり、指示命令系統の混乱を招きやすくなるため、昨今は内部顧問廃止の傾向が強くなってきています。
・外部顧問(企業と無関係の人材を雇用するケース)
これは業種によって報酬が大きく変わります。基本は「顧問料」として月額支払いのケースが多い ようです。
(例)
- 経営コンサルタント…月20~50万円程度
- 弁護士…月5万円程度
- 税理士…企業年商により決定
- 営業顧問…月型固定報酬 月10~50万円程度
- アポイント成果報酬型 月数万円~10万円程度
- 売上成果報酬型 売上金額の10~50%程度
- 技術顧問
- 「常勤」…年間500万円~1000万円もあり
- 非常勤」…月2~4回程度の出社で月9~20万円程度
(参考:顧問バンクホームページより)
外部顧問のメリットは、外部の人材である事から客観的な分析や意見をもらえるという所です。会社運営上のアドバイスをしたり、相談を受けることが主な役割です。
直接契約と派遣型契約
・直接契約
年間を通して雇用される場合は、一般的には役員報酬並みと言われています。(役員報酬の平均額については、先の「内部顧問」を参照)
直接契約の場合、委託委任もしくは準委任契約です。もし役員兼任で正社員の場合は雇用契約です。
・派遣型契約
派遣契約の場合、2パターンがあります。
- 派遣会社が顧問と企業の間に入る(コンサルティング型)
- 派遣会社は紹介をするのみで、契約は顧問と企業間で行う(マッチング型)
主な違いは、1のコンサルティング型は、顧問が派遣会社に仲介手数料(契約年収金額の約35%が 相場)を払う必要があるという所です。
そして企業が支払う顧問料を派遣会社と顧問で分配しますが、比率は派遣会社により違います。まず、企業が派遣会社に支払う顧問料は、月2回出社で月30~40万円が相場です。
- 折半の場合⇒顧問の報酬は「15万円~20万円」
- 7:3の「3」の場合⇒顧問の報酬は「9万円~12万円」です。
1社に派遣されるのであればこのくらいの報酬ですが、もう少し相手企業を増やし 、仮に5社となれば単純に×5となり45万円以上も見込めます。そうなれば定年後の資金にプラス程度の金額ではなく、むしろ会社員時代の収入を上回る可能性まででてきます。定年後に月10数万円の収入を望む方にとっては、「顧問」で働くという方法は十分な資金対策になるのではないでしょうか。
きちんと押さえたい「実務型顧問」という働き方
「実務型顧問」とはどんな働き方なのか?ここはしっかりと抑えておきたいところです。実務型顧問と一口でいっても、活躍できる分野や働き方はいろんなケースがあります。
活躍する分野
経営顧問、人事顧問、技術顧問、営業顧問など多岐にわたってオファーがあります。
「実務型顧問」という働き方
以前の外部顧問は「弁護士や税理士」のようなる分野に特化したいわゆる専門家を雇うことが多かったのですが、今ひときわ注目されているのが「実務型顧問」という働き方です。これはいわゆる「顔役」としての役割とは違った「現場で課題解決にあたるエキスパート」という役割を担っています。キャリアを通じて培ったノウハウを生かして、「現場のメンバーとともに」事業に参画するため「実務型顧問」と呼ばれています。実例を2つご紹介します。
【パターン1】
総務実務畑出身のAさん(68歳):
現在、販売会社の採用・人事制度の構築支援の実務型顧問として活躍。会社の急成長に、採用や人事教育、評価制度が追い付けない課題を抱えている販売会社の公募案件を目にし、まさに「総務人事畑で40年つとめ、会社の成長とともに組織を作り上げてきた自身の経験が生かせるのではないか?」と思い応募。
【パターン2】
ベンチャー企業の立ち上げを経験したBさん(45際):
経営課題が「本業のコールセンター事業が順調なうちに新しい事業の柱をつくりたい」という経営者様の案件を発見。直接経営者さまとコミュニケーションがとれたことで社内の事情「保守的な組織」を事前に把握でき、改革を進めるために、社長のパートナーの立ち位置と権限を条件にご支援をさせていただくことになった。
実務型顧問になるには、まずは人材派遣会社に顧問登録することから始めます。ただし、登録したからといって必ず仕事が得られるとは限りません。自分のスキルやノウハウを的確にアピールし、新たな情報のインプットなど自分のスキルを磨き続けることが必要です。
サラリーマンが重宝される時代に
定年後も豊かに暮らしたいという人は、いわば再雇用とはちがった自分のスキルを生かして働く「実務型顧問」を検討してみてはいかがでしょうか。よくサラリーマンはゼネラリストだといわれますが、30~40年も働いていれば何か必ず自分なりの強みがあるはずです。むしろ最近は「普通のサラリーマン」としての感覚や知識、経験が必要とされる時代になりました。派遣会社に登録している人の平均年齢は63~64歳が多いのですが、早い人では20代後半から登録している人もいます。「実務型顧問」は、ひと昔前のいわゆる定年退職者の単なるポストであった頃の「顧問」とは違った役割を担います。
まとめ
定年後の資金対策としての「実務型顧問としての働き方」は具体的にイメージできましたでしょうか?今は誰しも100年近く生きる時代となりました。定年をしてからまだまだ先は長いわけです。たとえ資金対策として「働く」という方法を選ぶとしても、「実務型顧問」は「一度終了してまた働く人」ではありません。「実務型顧問」はもう一度バッターボックスに立つようなものです。しっかりチャンスをつかんで、定年後も金銭的・精神的に豊かに暮らせるようにしていきましょう!今こそ「実務型顧問」がおすすめです!