顧問と参与の違い・定義をマスター!ビジネス組織の必須知識

「定年後の君を、顧問か参与として残したい、という話が取締役会で出ているんだが、どちらを選ぶかね?」ある日、上長から呼び出され、こう言われたとしたら、あなたは即答できますか?

もし、会社員や職員の総数全体を対象にして、ふたつの職務に関するアンケートを実施した場合、「それぞれの役割と定義を正しく把握している」という回答が占める割合は、かなり少ないのでは?と、想定されます。


そこで、この記事では、顧問と参与に焦点を当てて、定義・仕事内容・待遇について、一般企業や一般財団法人などを総括した組織で働くうえでの必須知識として、わかりやすく解説していきます。

会計参与以外の「参与・顧問は役員ではない」

「顧問、参与!? そんな役員待遇に、自分が推挙されているなんて!」そうした持ち掛け話があった際には、栄冠を手にするような気分を味わうかもしれません。

同時に、自分が新卒から定年間近の今日まで、より高い業績を目標に、常に一所懸命に業務に取り組み、時に、人間関係に忍耐を重ねた日々が脳裏をよぎります。そして、「頑張ってきてよかった!」という、想いを噛みしめることでしょう。

ただし、顧問と参与は「役員」ではありません。[1]会社法で定められている役員とは、「取締役」「監査役」「会計参与」の3つですから、会計参与を除く参与は役員ではないというのが、正しい認識です。

役員とは、従業員ではなく経営陣に籍をおく人物の総称ですが、一般の会社員=従業員が役員になるためには、まずは一度、定年に限らず会社を退職する必要があります。退職金制度がある企業においては、退職金を受け取ることで、その企業の従業員ではなくなります。

つまり、役員になるということは、会社員時代の延長上の昇格により、企業に残るということではありません。

[1]出典参考元:e-gov 法令検索│会社法(平成十七年法律第八十六号)>第三節 役員及び会計監査人の選任及び解任>第一款 選任>(選任)>第三百二十九条

社内における位置付けは、一般的に顧問のほうが参与より上

しかし、顧問と参与と聞けば、どちらも「役員クラス」というイメージが思い浮かぶのが、一般的な社会的認知度でしょう。なお、代表取締役を始めとする役員職の退任後のポストとして、経営や社内人事に関わることを熟知している「相談役」がありますが、

  • 「顧問」は相談役と同位置
  • その下位に「参与」がある

というのが、正しい認識です。外部顧問として依頼する、虎ノ門などに法律事務所を構え、国家資格を持つ弁護士・税理士などの士業職に対して、代表取締役でさえも「先生」付けでよぶのが、日本人の慣例といえます。そうしたことからも、「顧問」という職務の位置づけが高くなっているのではないでしょうか。

顧問と参与の最大の違いは、経営における決定権の有無

顧問と参与の実務役割のもっとも大きな違いとしては、経営におけるさまざまな事案の意思決定の権限が、参与にはあることに対し、顧問にはないことです。

また、顧問と参与の共通点としては、 経営に関わる事案について、これまで培ってきた 専門知識をもって、アドバイスや指導をおこない、 必要に応じて業務遂行実務に携わることがあげられます。

顧問の定義・対象者・仕事・出社日数の概要

それでは、まず、「顧問」について説明しましょう。

  • 定義:会社法の定義=なし/意思決定権=なし
  • おもな仕事内容:経営・事業上の売上高の数値確認や、日常的実務におけるアドバイス・指導
  • 平均出社日数/月:2~20日(内部・外部・常勤・非常勤によって異なる)
  • 種類:「内部顧問」と「外部顧問」の2種類があり、さらに「常勤」「非常勤」に分かれる

内部顧問の多くは、定年後に同企業内で、長年社員として勤務した期間に培った、専門的な業務知識や実例をよく把握している経験を活かして、経営者や現役世代に対して指導や助言する立場です。さまざまな事案に精通していることから「ブレーン」などともよばれます。対応範囲は、当該企業のみに従事することになります。

一方、外部顧問として代表的な職務が「顧問弁護士」ですが、「外部顧問とは、士業職だけなのか…。」とあきらめる必要はありません。近年では、普通の会社員でも、長年取り組んできた専門分野における知識・実務経験・ノウハウを活かした「実務型顧問」として、鮮やかな転身を遂げるケースが増えています。

具体的な段階としては、定年あるいは早期退職して、まずは顧問専門派遣会社に登録することです。その人材マーケットを利用して新たな企業と契約を結び、アドバイザーやコンサルタントとして活躍できます。

他企業の秘密保持契約(NDA)を守秘したうえで、的確な助言や指導にあたる実務内容は、事業規模拡大・新商品開発・海外展開などさまざまです。

また、少子高齢化問題が深刻化している現状では、政府の高年齢者雇用対策が加速し、企業側としても、長期的な人材不足という課題を抱えています。[2]2019(令和1)年の厚労省による企業へのアンケート結果は、「健康で、高い専門性を持ち、仕事への意欲も強い人物は、シニア世代であっても採用したい」意向が多く見られました。

[2]参考出典元:内閣府│2019年 多様化する働き方に関する企業の意識調査>労働市場の多様化とその課題>P.8

参与の定義・対象者・仕事・出社日数の概要

次に、「参与」の説明です。

  • 定義:会社法の定義:あり/意思決定権:あり
  • おもな仕事内容:役員陣への助言や、単独で専門的・特定された業務管理をおこなう
  • 平均出社日/月:月14~15日[3][4](職員データによる)(常勤・非常勤によって異なる)
  • ポジション:部下はいない

顧問と異なり、企業外部から就任する事例は少ないといえます。その理由として、その部署での専門性と実績能力が、今後の経営に欠かせないと判断される職務であるからです。

また、企業では部長など、ポスト枠の一定数が決まっているため、同等のポジションとして任命されるケースが多々あります。そのためか、「参与とは出世コースから外れた人物がなる」という話も聞かれますが、事実その背景に存在するのは、複雑なベールに覆われた社内人事・人間関係です。実際、同族経営方針の場合や、特別なコネクションが重要視され、実績もない窓際族が定年を迎えた場合、「参与待遇とする」事例もあります。

しかし、本当のところはどうなのでしょうか。

確かに、高度経済成長期では年功序列制度が幅を利かせ、バブル景気に移行した時代にかけては、企業資金にも余力はありました。その後2008(平成20)年のリーマン・ショック、昨今のコロナ禍の影響を受け、多くの企業が経営上の大打撃をこうむっています。

しかし、現在はレトロな昭和でなく、新たな令和です。実力主義を貫くため、甘い経営収支管理では生き残ってはいけません。

従って、同企業の内部事情や経営状態をよく把握している人物が適任と考えられ、部長クラスの管理職を務めた人が、任命される場合が多いといえます。さらに、経営上の決定権を持つという定義が重要視されるとしたら、経営者レベルの業務管理能力が要されることは必定です。

参考出典元:[3] 大口町(愛知県)参与の任用、給与、勤務条件等に関する取扱規程 >第7条 >(1)

参考出典元:[4]平成27年 警視庁教育参与の設置に関する規程ー東京都>(勤務日及び勤務時間)>第9条

顧問と参与の共通点は経営者・取締役を補佐すること

顧問と参与の共通点は、経営者・役員クラスを補佐し助言を与えることです。ただし、顧問が対象とするのは、現場の一般社員から部長などの管理職も含む幅広い層といえます。一方、参与は経営幹部の下位にあたり、助言対象は、その上位に位置する代表取締役をはじめ、役員に限られるというのが一般的です。

顧問と参与の収入の違いは、ケースbyケース

企業内の役員クラスが定年後のポストとして就く「内部顧問」と同じく、「参与」の年収は、一般的に退任時の給与ベースが適用・基準とされます。

しかし、「外部顧問」を選択した場合、多数の企業と契約することが可能です。当初は、顧問専門の派遣会社に登録して紹介案件に就業するケースが多くを占め、派遣元会社によって異なりますが規定割合の仲介手数料が差引かれた額が、手取りとなります。

そこで、顧問としてのキャリアを積み、提携先を増やし直接契約を結ぶことにつながれば、参与よりも、年収が多くなる可能性も大いにあります。

参考:顧問の年収ズバリ解説!キャリアを活かす余裕の定年後ライフ

まとめ │ 顧問・参与への道は、仕事に打ち込む・キャリアを振り返ること

顧問と参与の違いについて、お伝えしてきましたが、現役で会社員として勤務中の人が定年後に、同じ会社の内部顧問や参与の職務、また外部顧問を目指す方法は、今の仕事に真剣に向き合うことです。

誰の目にも、売上高増の成績が華々しく目立つ部署に限らず、かえって地道な業務を求められる部署のほうが、コツコツと真面目に積み重ねている成果を、誰かがどこかで目に留めているもの。さっそく、今から現在の部署で、自分の価値を高めるよう意識してみましょう。部署は与えられるものですが、そのなかでの順位なら、いくらでもコントロールは可能です。そして、栄転・昇進・昇格への道も開けます。

また、既に定年した人も、自分のキャリアを整理し、「実務型顧問」という働き方を検討してみてはいかがでしょう。経済的にも余裕があり、充実したリタイヤ後のライフプランのためにも、顧問派遣会社の扉を開くという行動は、その第一歩となるはずです。